公正取引委員会「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」は、労務費の転嫁について発注者・受注者が採るべき行動を示し、交渉内容を記録して双方で確認する考え方を案内しています。適用法令と取引条件は個別に確認します。
中小企業庁「価格交渉・転嫁の支援ツール」では、価格交渉に使う資料や支援情報が案内されています。公表資料をそのまま自社価格の正解とせず、自社の原価、契約、顧客への価値を根拠にします。
本文の旧価格1万円、新価格1万1,000円、変動費6,000円、月100件、離脱20%は計算方法を示す架空条件です。値上げ後の売上や顧客維持を保証しません。
価格改定は、採算改善だけでなく表示、契約、見積、予約、前受、返品、消費税、既存顧客への扱いを確認して実行します。

値上げ率だけを決め、商品別原価・既存契約・販売数量の変化を確認していない
- 原価作業時間や決済費を含めず、売れるほど苦しくなる商品がある
- 契約既存顧客へいつから新価格を適用できるか分からない
- 現金改定後の売上ではなく、入金へ反映する月を見ていない
この記事の結論
- 商品別に原価を再計算
材料、外注、決済、配送、直接労務を分けます。 - 値上げ後の必要件数を逆算
粗利額を維持できる販売数を確認します。 - 告知・契約・入金を接続
適用日と資金繰り反映日を分けます。
創業融資後の価格改定・粗利改善の不足を無料相談で整理する
資料がすべて揃っていなくても相談できます。現在ある通帳、会計データ、融資資料から、どこを先に整えるべきかを確認します。
値上げ前に原価・契約・顧客を同じ基準日で確認する
「コストが上がった」という感覚を、価格へ反映できる単位に分けます。
表は左右に動かせます。
項目名は固定表示です。
| 確認対象 | 具体的な数字 | 誤りを防ぐ照合先 |
|---|---|---|
| 材料 | 使用量・単価・歩留まり | 仕入請求 |
| 外注 | 工程別単価・最低料 | 契約・請求 |
| 直接労務 | 作業時間・時間単価 | 勤怠・給与 |
| 決済・配送 | 率・件数・距離 | 明細・運賃表 |
| 固定費 | 家賃・管理・広告 | 契約書 |
| 販売条件 | 値引・返品・ポイント | 販売実績 |
| 契約条件 | 価格条項・通知期間 | 契約書 |
| 顧客構成 | 売上・粗利・継続率 | 顧客別台帳 |
原価の期間をそろえる
前年平均、直近月、見積単価を混在させません。基準日と対象期間を書き、臨時購入や一時的な特急料金は恒常原価と分けます。
固定費を一件へ無理に配賦しない
販売数が変われば一件当たり固定費も変わります。まず売価から変動費を引いた限界利益を計算し、その月間合計で固定費を賄えるか確認します。
値引後の実現単価を見る
定価1万円でも、クーポン、法人割引、返品を含む実現単価が9,300円なら、定価だけで粗利を計算しません。顧客・商品別の実績を使います。
1万円から1万1,000円へ改定する架空試算
値上げ後に販売数が減るケースまで月間限界利益を比べます。
表は左右に動かせます。
項目名は固定表示です。
| ケース | 単価 | 販売数 | 売上 | 限界利益 |
|---|---|---|---|---|
| 現状 | 1万円 | 100件 | 100万円 | 40万円 |
| 新価格・維持 | 1万1,000円 | 100件 | 110万円 | 50万円 |
| 10%減 | 1万1,000円 | 90件 | 99万円 | 45万円 |
| 20%減 | 1万1,000円 | 80件 | 88万円 | 40万円 |
| 25%減 | 1万1,000円 | 75件 | 82.5万円 | 37.5万円 |
| 変動費 | 6,000円/件 | 販売数連動 | ― | 単価-6,000円 |
| 固定費 | 月35万円 | 数量非連動 | ― | 別途控除 |
| 損益分岐 | ― | 70件 | 77万円 | 35万円 |
現状の限界利益を再現する
現状は(1万円-6,000円)×100件=40万円です。新価格では一件5,000円となるため、40万円÷5,000円=80件、つまり販売数が20%減るまで月間限界利益は現状と同額です。
最終利益まで確認する
固定費35万円なら、現状の営業余力は40-35=5万円です。新価格で80件でも5万円ですが、告知費、メニュー改定費、解約返金が出れば初月は下回る可能性があります。
税抜・税込を統一する
仕入が税抜、販売が税込のままでは比較できません。会計上の消費税処理、表示価格、決済手数料の計算基準を確認し、同じ基準で表を作ります。
一律値上げの前に商品・顧客・契約別に順序を決める
数量だけでなく継続率と提供価値の変化を追います。
表は左右に動かせます。
項目名は固定表示です。
| 区分 | 優先して見る数字 | 対応候補 |
|---|---|---|
| 赤字商品 | 限界利益・作業時間 | 仕様・価格見直し |
| 主力商品 | 粗利総額・継続率 | 小幅改定・価値説明 |
| 入口商品 | 次回購入率 | セット設計 |
| 長期契約 | 更新日・通知期間 | 更新時協議 |
| 大口顧客 | 依存度・個別原価 | 根拠提示 |
| 新規顧客 | 獲得費・初回粗利 | 先行適用 |
| 低稼働時間 | 時間帯粗利 | 最低料金 |
| 特急対応 | 追加工数・機会損失 | 別料金化 |
顧客離脱を全社平均で置かない
法人の年契約と一般客の都度購入では反応が異なります。顧客群ごとに対象数、改定受入、解約、保留を数え、売上だけでなく粗利総額を比較します。
商品を減らす選択も比較する
赤字商品を値上げして残す、仕様を簡素化する、最低発注量を設ける、終了する場合を比較します。主力商品の販売機会や信頼への影響も記録します。
値上げ理由と価値説明を分ける
コスト上昇は社内根拠、納期短縮や品質向上は顧客価値です。事実でない改善を約束せず、変更する価格、対象、適用日、サービス内容を明確に伝えます。
値上げ効果は適用日ではなく入金日で資金表へ入れる
粗利改善が返済原資になるまでの時間差を確認します。
表は左右に動かせます。
項目名は固定表示です。
| 工程 | 架空日程 | 資金繰り上の扱い |
|---|---|---|
| 社内承認 | 9月10日 | 費用・価格決定 |
| 顧客告知 | 9月15日 | まだ入金なし |
| 見積更新 | 9月20日 | 受注未確定 |
| 新価格適用 | 10月1日 | 提供開始 |
| 検収・請求 | 10月31日 | 売掛計上 |
| 掛取引入金 | 11月30日 | 現金反映 |
| カード入金 | 契約サイクル | 明細で確認 |
| 返済・固定費 | 毎月所定日 | 先行支出 |
資金不足月を別対策で埋める
10月適用でも掛取引の入金が11月末なら、9月と10月の資金不足は値上げだけで解消しません。既存残高、回収、仕入、支払日を13週表で確認します。
前受金を当然視しない
前受や予約金を導入する場合は、顧客同意、契約、返金条件、会計処理を確認します。受け取った全額を即時の利益とせず、提供義務に対応させます。
計画値と実績を週次で比べる
改定後8~12週間は、対象件数、実現単価、数量、解約、値引、限界利益、入金を追います。悪化時の再調整条件を先に決めます。
決定根拠・顧客通知・合意を後からたどれる形で残す
価格表だけでなく、算定と協議の履歴を保存します。
表は左右に動かせます。
項目名は固定表示です。
| 資料 | 最低限の内容 | 更新時点 |
|---|---|---|
| 原価表 | 数量・単価・出典 | 仕入変更時 |
| 価格試算 | 現旧価格・離脱率 | 承認前 |
| 承認記録 | 理由・適用日・責任者 | 決定時 |
| 顧客一覧 | 契約・通知・合意 | 個別対応時 |
| 見積・契約 | 価格・範囲・期限 | 更新時 |
| 告知文 | 対象・適用日・問合せ | 送付前 |
| 実績表 | 数量・粗利・離脱 | 週次・月次 |
| 資金繰り | 入金・返済・残高 | 毎週 |
交渉記録は日時と相手を残す
公正取引委員会「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」の考え方も参照し、申入れ日、資料、相手の回答、合意・未合意、次回日程を記録します。口頭合意だけで請求額を変えません。
旧価格の適用対象を明示する
見積済み、予約済み、定期契約、キャンセル後の再注文をどう扱うか決めます。担当者ごとに判断が違わないよう、例外承認者も定めます。
公開資料を自社の根拠に置き換える
中小企業庁「価格交渉・転嫁の支援ツール」の様式や指標は整理の助けに使い、自社の請求書、賃金台帳、作業時間、契約を添えます。指数だけで個別価格が自動決定するとは説明しません。
価格改定を検討から入金確認まで八段階で管理する
承認、通知、提供、請求、入金を一つの日付にまとめません。
表は左右に動かせます。
項目名は固定表示です。
| 判断時点 | 確認する事実 | 残す記録 |
|---|---|---|
| 原価確認 | 材料・労務・外注 | 原価台帳 |
| 採算試算 | 限界利益・固定費 | 比較表 |
| 顧客分析 | 契約・継続率 | 顧客一覧 |
| 社内承認 | 価格・対象・適用日 | 議事記録 |
| 通知・協議 | 送付・回答・合意 | 協議履歴 |
| 提供・請求 | 対象取引・新単価 | 納品・請求 |
| 入金確認 | 実現単価・差額 | 銀行・決済 |
| 効果検証 | 粗利・離脱・残高 | 月次レビュー |
価格を先に公表しない
原価計算、契約確認、システム設定、社内承認が終わる前に告知すると訂正が生じます。実施条件と中止条件を確認してから通知します。
二重価格をシステムでテストする
店頭、EC、見積、請求、レシート、会員価格の更新漏れを試します。表示と決済が違う状態を避け、旧予約の扱いもテストします。
問い合わせ回答を一本化する
理由、対象、旧価格期限、返金、例外について回答集を作ります。個別の交渉権限と承認上限を決め、担当者が無断で割引しません。
販売数減少の警戒線を決める
架空例では80件が現状限界利益を保つ境目です。75件以下が2週続くなど、再確認を始める条件を事前に定めます。
値上げ費用も予算化する
メニュー、印刷、ラベル、POS、EC、契約変更、顧客対応の費用と担当時間を計上します。初月の利益だけを過大に見ません。
現場の作業時間を再測定する
労務費単価が同じでも、提供時間が増えれば原価は上がります。準備、移動、片付け、再作業を含む実時間を測ります。
金融機関説明は計画差から始める
当初計画の単価、数量、粗利と実績を比較し、値上げ後の三ケース、告知状況、入金時期を示します。承認済みと見込を区別します。
改定後に原価表を固定しない
仕入や賃金が変わったら、次の見直し日を待たず影響額を記録します。短期間の再値上げを前提にせず、契約と顧客影響も再評価します。
値上げ後の販売数分岐を商品ごとに計算する
売上高の増減だけでは採算を判断できません。
限界利益基準
現状限界利益÷新単価の限界利益で必要件数を計算します。変動費も値上がりするケースを別に置きます。
固定費回収基準
月固定費÷一件限界利益で損益分岐件数を出します。商品間で共通固定費を重複計上しません。
資金基準
利益が出ても入金前に返済日が来ます。最小残高が社内基準を下回る週を価格以外の対応につなげます。
解約率より顧客別粗利の変化を見る
件数減少が同じでも失う価値は異なります。
継続顧客
利用頻度、追加購入、紹介、対応工数を確認し、売上だけで高価値と決めません。
赤字顧客
個別仕様、少量配送、長い支払サイトが原因なら、価格以外の条件変更も比較します。
新規顧客
新価格での成約率と獲得費を測ります。旧価格の実績と単純比較せず、流入経路をそろえます。
BtoB価格交渉は根拠・協議・合意を分ける
法令適用を自己判断せず、取引関係と契約を確認します。
根拠
最低賃金や指数だけでなく、自社の作業時間、賃金、外注、材料の変化を説明できるようにします。
協議
相手の質問と自社回答、代替案、次回日を記録します。申入れだけで合意済みとは扱いません。
合意
価格、対象、期間、数量、支払条件、適用日を書面で確認し、受発注システムへ反映します。
改定後90日で価格と運用を再点検する
成功を売上高だけで評価しません。
30日
設定漏れ、問い合わせ、解約、値引の初期問題を直します。
60日
数量、単価、変動費、粗利、顧客層の変化を計画と比較します。
90日
固定費回収、現金残高、再購入、現場負荷を確認し、維持・修正・商品終了を判断します。
値上げを続ける・直す判断を実績で残す
改定後の数字を次回の交渉根拠へつなげます。
実現単価
定価ではなく値引、返品、ポイント、個別合意後の単価を顧客群別に集計します。差額が大きい場合は設定漏れと例外運用を確認します。
粗利総額
件数減少だけを失敗とせず、変動費控除後の粗利総額と固定費回収を確認します。原価上昇が続く場合は同じ前提で再計算します。
顧客反応
解約理由、保留、問い合わせ、再購入を記録します。担当者の印象だけで値上げを撤回せず、契約と長期的な採算も合わせて判断します。
値上げ前に整理したい3つの状況
以下は実績や融資成功例ではなく、整理方法を示す架空例です。融資可否、金額、条件、必要書類は個別の審査と契約で決まります。
旧価格1万円、変動費6,000円、100件の架空例では月間限界利益40万円です。新価格1万1,000円なら80件で同額になる計算を再現します。
長期契約と都度購入が混在しています。通知期間と合意方法を分け、新価格が実際に入金される月まで13週資金繰りへ反映します。
値上げ後に件数が25%減り、限界利益が37.5万円となるケースです。顧客群、値引、商品構成を確認し、価格維持か仕様変更かを判断します。
創業融資サポートを利用したお客様の声
支援の進み方や相談時の状況を知るには、実際のお客様インタビューが参考になります。承認率などの集計数字ではなく、ご本人の体験を確認できる事例をご案内します。






融資のアイラボの料金と支援範囲
着手金0円・成功報酬5%+税
報酬は融資が実行され、着金したときに発生します。融資が実行されなかった場合、サポート報酬はかかりません。
契約前に、成功報酬の計算対象、消費税、支援期間、追加費用の有無、解約条件を確認します。支援を利用しても融資は保証されず、最終的な可否と条件は金融機関等が決定します。
よくある質問
価格改定の法令、契約、表示、適用日、顧客対応は取引形態ごとに異なります。公式情報と契約書を確認してください。
創業融資の返済中に値上げしてもよいですか?
返済中であることだけで一律に禁止とは判断できません。融資契約、資金使途、取引契約、表示ルールを確認し、採算と顧客影響を試算します。
何%上げればよいですか?
一律の正解はありません。商品別の変動費、固定費、目標利益、販売数量、競合、顧客価値から必要価格を計算します。
原価率だけ見れば十分ですか?
原価率に加え、一件当たり限界利益、月間粗利額、固定費、入金サイト、返品・値引きを確認します。
顧客離脱率はどう置きますか?
顧客層と商品別に、維持、10%減、20%減など複数ケースを置き、実績で更新します。
既存契約もすぐ新価格にできますか?
契約の価格条項、更新時期、通知期間、個別合意を確認します。合意前に一方的に変更できるとは限りません。
値上げ後の資金繰りはいつ改善しますか?
適用日ではなく、新価格での提供、請求、入金の日程で判断します。カードや掛取引では反映が後になります。
交渉資料には何を入れますか?
原価推移、対象商品、現旧価格、算定根拠、適用希望日、取引条件、協議履歴を整理します。
この記事の監修者・運営者情報

石川 康平
五常コンサルティング株式会社 代表取締役
2024年の問い合わせ・ヒアリング対応300件をもとに、創業融資の支援範囲・料金・制度情報について確認しています。
- 執筆・編集
- 融資のアイラボ編集部
- 監修
- 五常コンサルティング株式会社 代表取締役 石川 康平
- 公開日
- 2026年8月8日
- 最終更新日
- 2026年9月3日
- 制度情報の確認方法
- 日本政策金融公庫、信用保証協会などの公式ページを確認し、申込時は各窓口で最新情報を再確認します。
※記事内の相談場面を表現した写真は、内容を分かりやすく伝えるために作成したAI生成のイメージです。「お客様の声」に掲載しているお客様と監修者の写真は、実際のお客様・監修者の写真です。
確認した公式情報
制度内容や申込方法は改定される場合があります。申込時には各公式ページと窓口で最新情報をご確認ください。PDFは容量が大きい場合があるため、スマートフォンでは通信環境にもご注意ください。
制度情報確認日:2026年9月3日
価格改定後に返済後の現金が残るか確認する
商品別原価、必要価格、顧客影響、適用日、新価格の入金月を一枚に整理します。相談時点で契約する必要はなく、現在ある資料と社内の運用から確認できます。
資料が完成していなくても、相談した時点で契約する必要もありません。
※融資の可否、金額、利率、返済期間、担保・保証人などの条件は、各金融機関・信用保証協会の審査により決定されます。融資のアイラボは金融機関ではなく、融資の実行を保証するものではありません。
※本記事は2026年9月3日時点の公表情報をもとに作成しています。制度内容は変更される場合がありますので、申込時には必ず各公式窓口で最新情報をご確認ください。
