勤務先から独立するとき経験と会社の資産を分け受注と入金の根拠を示す

前職の経験は事業計画の強みになります。顧客情報や図面を使える条件、独立後の受注、入金が遅れたときの現金は、別々に確かめましょう。

独立した精密加工の技術者が保護眼鏡を着け、自分の工房で金属部品を測定する架空の場面

仕事の場面はAI生成の架空イメージです

経験があっても資産は別に確認

独立後に使うものを振り分ける

前職で身につけたもの・使っていたもの

本人の経験・技能

担当業務・年数・資格を創業計画へ。秘密情報を含めず説明する

顧客情報・図面・設備

所有・契約・許諾範囲を確認。無断でコピーや利用をしない

利用できる根拠を残す準備方法を資料で示す

自社購入・自社開発・適切な許諾などの根拠を残します。円満退職の了解と資産を使う許可は別です。個別の権利・契約は専門家へ確認します。

経験・顧客情報・図面などの確認表へ →
経験・顧客情報・図面などの確認表

日本政策金融公庫の創業計画書セルフチェックは、勤務先名だけでなく担当業務、役職、身につけた技能等を略歴へ記載するよう案内しています。一方、経済産業省は営業秘密について、有用性・秘密管理性・非公知性の要件と管理指針を公開しています。

項目創業計画へ示すこと利用前の確認
経験・技能担当業務、成果、資格、工程理解誇張せず本人の経験を示す
顧客情報独立後の獲得方法・同意名簿・連絡先・履歴の取得経緯
価格・原価・提案公開情報と自社見積で再構築秘密情報・社内資料を流用しない
図面・コード・著作物自社開発・許諾・購入を明示知財・契約上の帰属
機器・アカウント自社購入・契約費を計上会社資産・IDを利用しない
競業・勧誘条項と確認結果を記録弁護士等へ個別確認

経験の説明と、勤務先資産の利用は別問題です。「自分が担当していたから使える」と判断せず、退職前の契約、情報管理、顧客との新契約を確認します。

見込270万円と発注240万円を分ける

架空例|対象月の受注・商談を積み上げる

前勤務先:書面で発注確認180万円

新規A:発注書あり60万円

商談B:60万円 × 仮定50%30万円

見込みを加重した計画270万円

発注確認分は180+60=240万円。Bの30万円は確定受注ではありません。Bを受注できなければ240万円となり、前勤務先の割合は75%です。

受注根拠と前勤務先への依存度へ →
受注根拠と前勤務先への依存度

金額と確度は特定事業者の実績ではなく、売上根拠を分ける架空例です。

売上候補表面金額根拠・確度計画計上
前勤務先との新規契約180万円開始日・単価・発注を書面確認180万円
新規顧客A60万円発注書あり60万円
商談中顧客B60万円受注確度50%の社内仮定30万円
合計300万円確定・見込を分離270万円
前勤務先関連比率180÷270集中リスク約66.7%

商談60万円に社内仮定50%を掛けた30万円は加重した見込みであり、確定受注でも安全な下限でもありません。前勤務先関連が約66.7%なら、契約終了、単価改定、入金遅延の影響を示し、新規顧客の獲得期限を置きます。

対象は同じ計画月の売上です。発注確認分は前勤務先180万円+新規A60万円=240万円。Bが受注できなければ240万円となり、前勤務先の割合は180÷240=75%です。Bを含む加重計画270万円での約66.7%と分けて示します。Bの50%は半分の金額が必ず入る意味ではありません。発注済みでも取消条件や納品・入金日は確認します。

開業支払700万円と予備500万円

架空例|必要資金1,200万円を配分

開業前の設備・物件等700万円

開業後の運転資金500万円

自己資金400万円
創業融資希望800万円

設備350+物件150+IT等100+採用等100=700万円を支払う仮定。残る500万円は開業後の入金待ちに備える現金です。

必要資金1,200万円と調達の内訳へ →
必要資金1,200万円と調達の内訳
費目架空の金額根拠資料
設備・工具350万円自社名義の見積
物件・保証金150万円候補物件・契約条件
IT・ライセンス・知財準備100万円新規契約・利用許諾
採用・営業開始100万円採用計画・営業資料
運転資金500万円入金までの固定費等
必要資金1,200万円―
自己資金400万円形成履歴
創業融資希望800万円申込先の審査

勤務先のパソコン、工具、ソフト、図面を継続利用できる前提にせず、自社で必要な設備・ライセンスを見積ります。譲渡・使用許諾がある場合は対象、対価、期間、保守、終了時の扱いを書面化します。

開業前に設備・物件・IT等・採用等の合計700万円を支払う仮定です。運転資金500万円はその時点で支払う費用ではなく、開業後の入金待ちへ備えて残す現金です。次の遅延例はこの500万円から始め、開業前の700万円をもう一度差し引きません。

2か月未入金なら残り200万円

架空の遅延ケース|2か月とも入金ゼロ

開業後の現金500万円

第1月末:150万円支払350万円

第2月末:さらに150万円支払200万円

前職案件が遅れ、新規顧客分もこの2か月は未入金の仮定。給与・家賃・返済等の月150万円を含む計300万円を先に支払います。追加借入300万円が必須という意味ではありません。

月別の先行支出と残高の計算表へ →
月別の先行支出と残高の計算表

前勤務先との取引開始が2か月遅れ、新規顧客分もその2か月は入金ゼロとする架空の慎重ケースです。月150万円は給与・家賃・借入の元利返済等を含む現金支出とし、この期間のその他支出は発生しないと仮定します。

月予定入金固定支出等月次資金差
第1月0円150万円マイナス150万円
第2月0円150万円マイナス150万円
2か月累計0円300万円マイナス300万円
開業後の運転資金500万円2か月の実支払300万円残り200万円

口頭合意があっても、退職日、取引開始日、発注、検収、請求、入金はずれる場合があります。運転資金500万円から300万円が先行すれば残り200万円です。新規営業、納期遅延、設備故障まで含め最低残高を決めます。

300万円は確保した運転資金500万円から先に支払う額であり、300万円の追加借入が必ず必要という意味ではありません。最低残高や別の未払費用を含めて不足がないかを確認します。

初回入金までの証拠をつなぐ

口頭の予定から実際の入金まで
  1. 利用の合意譲渡・許諾の対象と期間を確認
  2. 独立後の発注顧客・単価・数量・開始日を書面で確認
  3. 納品・検収・請求いつ請求できるか、支払条件を確認
  4. 入金通帳で金額と日付を確認

発注書があっても、すぐに現金が入るとは限りません。金融機関へ出す資料は、相手方情報の開示範囲も確認します。

独立準備の資料と開示範囲の確認へ →
独立準備の資料と開示範囲の確認
退職雇用契約・誓約・競業・秘密保持
権利知財・データ・設備・商標の帰属
合意譲渡・許諾・業務委託・出資
顧客意向・見積・発注・契約・入金
営業新規顧客・商談・獲得費・期間
資金必要資金・依存度・下振れ残高

元勤務先の機密資料を融資相談へ無断提出しません。提出可能な契約書や意向書も、相手方名・条件の開示範囲を確認します。

競業避止義務、秘密保持、知的財産、顧客勧誘、従業員移籍の適法性を判定する記事ではありません。元勤務先・顧客との契約と個別事情を弁護士等へ確認してください。

小牧市藤島町・県道451号の実景

愛知県・小牧市藤島町・県道451号

独立後の拠点から配送・訪問を考える

小牧市藤島町の道路の実景です。製造業などの独立では、新しい拠点からの納品や顧客訪問にかかる時間・費用も計画へ入れます。写真は架空例の事業所や顧客の所在地を示すものではありません。

小牧市藤島町・県道451号/2016年5月28日撮影。現在の様子とは異なる場合があります。写真:円周率3パーセント(Wikimedia Commons原典)/CC BY-SA 4.0。縮小・WebP変換。同ライセンスで利用。

必要な準備を項目別に確認

制度・条件と相談前の確認

勤務先からの独立には、退職後に自力で起業する場合、顧客や技術を契約で引き継ぐ場合、事業会社と新会社を設ける場合などがあり、同じ形とは限りません。誰の事業・権利・契約を使うのかで準備が異なります。

経済産業省の公表説明では「スタートアップ創出型カーブアウト」を、事業会社が自社では事業化できない技術のために別法人を創設することとしており、一般的な事業の切り出しとは区別しています。ガイダンスの考え方を参考にしつつ、個別契約は弁護士等へ確認します。

売上根拠として前職顧客を挙げる場合、担当者との口頭会話だけで受注確定にしません。顧客本人の選択、元勤務先との契約、秘密保持、競業避止、紹介条件を確認し、意向表明、見積、発注、契約を確度別に分けます。

前職一社または引継ぎ顧客へ売上が集中する場合は、契約終了、価格変更、入金遅延を試算します。新規顧客の獲得時期と費用を計画へ入れ、関係が途切れても返済できる下振れ案を作ります。

独立準備の論点を具体化

スピンアウト創業融資で想定される3つの相談

以下は実績・成功事例ではなく、確認対象を示す想定例です。

想定相談例1

経験は示しつつ、顧客情報・図面・コードを勤務先資産と分けたい

想定相談例2

売上候補300万円を発注確認240万円と商談見込30万円へ分けたい

想定相談例3

取引開始2か月遅延による先行支出300万円を運転資金へ反映したい

この事業で融資前に数値化するポイント

円満退職と権利許諾を同じにしない

退職の了解があっても、顧客データや知財の利用許可とは別です。対象と期間を契約で確認します。

受注意向を売上確定にしない

意思表示の主体、数量、単価、時期、取消条件を確認します。確度を掛けた計画とは別に、未受注の場合の売上も試算します。

一社依存から抜ける営業費を入れる

紹介、展示会、広告、営業人員など、新規顧客を得るまでの費用と期間を資金計画へ入れます。

手続・必要資金・収支の補足

勤務先との関係とスピンアウトの形を定義する

関係

元勤務先との合意を確認

退職、出資、取引、支援を分けます。

権利

使える資産を特定

知財、データ、ブランド、人材を確認します。

売上

顧客意思を確度別に

口頭、見積、発注、契約を分けます。

関係整理表には、対象事業、元勤務先との契約、競業避止・秘密保持、使用する知財・設備・データ、顧客・仕入先の同意、出資・貸付、移籍人材、対価、解除条件を記録します。

契約、報酬、申込撤回、会社の支配関係、出資、競業避止、知的財産の扱いは個別事情で異なります。契約書と当事者・金融機関の書面回答を優先し、法的判断は弁護士等へ確認してください。融資の可否、金額、条件は金融機関等が審査して決定します。

競業避止は同業での活動を制限する契約条項、秘密保持は業務上の秘密を守る約束です。条項があるかと、その条項が個別の行動へどう適用されるかを分けて確認します。

競業避止・秘密保持・知的財産・データを確認する

独立時に確認する権利・契約

前職との関係

  • 退職・競業避止・秘密保持契約
  • 特許・商標・著作物・ノウハウ
  • 顧客・仕入先・販売代理・紹介契約
  • 設備・在庫・データ・ドメインの譲渡等
売上依存へ備える資金

毎月先行する支出

  • 前職一社の売上・粗利・入金サイト
  • 上位顧客の失注・値下げ・遅延
  • 新規顧客獲得費・営業期間
  • 契約終了時の固定費と返済

前職から受注予定でも、契約前の金額は確度を下げます。売上が半減・三か月遅延・契約なしの各ケースで、給与、外注、家賃、返済後の残高を確認します。

顧客引継ぎを本人同意と契約確度で整理する

項目計算・確認方法根拠資料
経験本人の職歴・技術再現できる能力
会社資産秘密・データ・知財持出し不可を確認
許諾・譲渡契約で利用可能範囲・期間・対価
顧客意向見積・発注・契約本人同意・確度

元勤務先との関係が良好でも、担当者の口頭了解だけで会社資産を使いません。権限ある当事者との契約と顧客の意思を確認します。

工程と融資相談の資料

前職・特定顧客への売上依存を下振れ試算する

退職から初回入金までの給与代替、社会保険、外注、機器、事務所、専門家費用を計上します。前職案件の検収や支払サイトが長い場合、その期間の運転資金を追加します。

前職との契約や知財利用料、設備譲渡代金、紹介手数料がある場合は、相場と契約条件を確認し、初期費用と継続費へ分けます。

制度、許認可、手続、融資条件は変更される場合があります。申込時は公的機関の最新情報と金融機関の案内を確認してください。

創業融資サポートを利用したお客様の声

支援の進み方や相談時の状況を知るには、実際のお客様インタビューが参考になります。承認率などの集計数字ではなく、ご本人の体験を確認できる事例をご案内します。

融資のアイラボの料金と支援範囲

着手金0円・成功報酬5%+税

報酬は融資が実行され、着金したときに発生します。融資が実行されなかった場合、サポート報酬はかかりません。

候補制度の整理必要資金の確認創業計画書の作成支援提出資料の確認面談質問の準備申込前後の進行整理

契約前に、成功報酬の計算対象、消費税、支援期間、追加費用の有無、解約条件を確認します。支援を利用しても融資は保証されず、最終的な可否と条件は金融機関等が決定します。

よくある質問

申込み方法や必要書類は制度・窓口・事業内容によって異なります。個別条件は必ず担当窓口へご確認ください。

勤務先から独立して創業融資を申し込めますか?

申込みは可能ですが、経験、権利関係、顧客・売上根拠、必要資金、退職・開業時期を具体的に説明します。

前勤務先の顧客へ営業してもよいですか?

顧客情報の取得経緯、秘密管理、就業規則・誓約、勧誘方法、顧客本人の意思を確認し、個別判断は弁護士等へ相談してください。

競業避止条項があれば同業で独立できませんか?

条項の有効性は期間、地域、職務、代償等の個別事情で異なります。自己判断で無視せず契約書を専門家へ確認します。

勤務先で作った図面やコードを使えますか?

著作権、営業秘密、契約上の帰属、使用許諾を確認します。コピーせず、独立後に適法に用意した成果物を使います。

前勤務先からの受注予定は売上根拠になりますか?

基本契約、発注書、開始日、数量、単価、支払条件が確認できる範囲で計上し、口頭予定は別の慎重ケースにします。

前勤務先への売上依存が高くても問題ありませんか?

直ちに否定されるとは限りませんが、契約終了時の影響、新規顧客獲得、価格決定力、入金条件を示します。

退職前にどこまで創業準備できますか?

就業規則、秘密保持、副業・競業、会社設備・時間の利用を確認し、相談記録、自己資金、公開情報による市場調査など権利侵害のない準備を進めます。

この記事の監修者・運営者情報

監修者 五常コンサルティング株式会社 代表取締役 石川康平
監修者

石川 康平

五常コンサルティング株式会社 代表取締役

2024年の問い合わせ・ヒアリング対応300件をもとに、創業融資の支援範囲・料金・制度情報について確認しています。

五常コンサルティング株式会社の公式サイトを見る

執筆・編集
融資のアイラボ編集部
監修
五常コンサルティング株式会社 代表取締役 石川 康平
公開日
2026年8月11日
最終更新日
2026年9月10日
制度情報の確認方法
日本政策金融公庫、信用保証協会などの公式ページを確認し、申込時は各窓口で最新情報を再確認します。

※冒頭の仕事の写真はAI生成の架空イメージです。出典を記した地域写真は実景です。お客様の声・監修者の写真は実際の人物です。

確認した公式情報・補足資料

2026年9月10日改訂:仕事・人物画像と図解を追加。本文・表の単位、現金と費用、条件と入金時期を照合しました。今回の公式情報の追確認範囲:日本政策金融公庫の略歴の記載項目・融資手続を確認し、公開創業事例は検索経由で内容を確認しました。経済産業省の営業秘密の3要件とカーブアウトの定義は検索経由で公表説明を確認しました。カーブアウトガイダンスPDF全体と競業避止等の個別法的判断は今回の再確認に含めていません。制度情報の当初確認日は過去の記録です。以下の参照先のうち、該当箇所を確認しています。

制度・法令は公的機関や専門団体の公式情報を優先して確認し、民間事業者のページはサービス内容や比較観点を補う資料として参照しています。申込・契約時は、各公式ページと契約書面で最新情報をご確認ください。

情報の当初確認日:2026年8月27日

経済産業省「起業家主導型カーブアウト実践のガイダンス」の公表説明

独立後に使える資産と受注・残高を整理する

本人の経験、許諾が必要な資産、独立後の契約・発注、入金予定を分けます。未受注や入金遅れのケースも試算し、申込前に確認する点を整理します。

資料が完成していなくても、相談した時点で契約する必要もありません。

※融資の可否、金額、利率、返済期間、担保・保証人などの条件は、各金融機関・信用保証協会の審査により決定されます。融資のアイラボは金融機関ではなく、融資の実行を保証するものではありません。

※制度情報の当初確認日は2026年8月27日です。本文・画像・図解は2026年9月10日に改訂しました。今回の再確認範囲は公式情報欄をご参照ください。制度内容は変更される場合がありますので、申込時には必ず各公式窓口で最新情報をご確認ください。

無料相談電話LINEメール