日本政策金融公庫は、既存事業を受け継いでスタートする形を「継ぐスタ」と案内しています。すでにある設備、販売先、仕入先、従業員、ノウハウ等を活用できる可能性がある一方、すべてが当然に後継者へ移るわけではありません。
株式譲渡、事業譲渡、個別資産の売買等では、取得するもの、負う債務、必要手続きが異なります。方式名だけで処理を決めず、基本合意、調査、最終契約、許認可や契約相手の同意を確認します。
融資計画では、譲渡代金だけで必要額を計算しません。仲介・調査・登記等の費用、老朽設備の更新、在庫補充、名義変更中の固定費、売上入金までの運転資金を月別に置きます。
親族内承継の記事や融資後の代表交代とは異なり、本記事は第三者を含む既存事業の取得と同時に創業する場面へ焦点を当てます。売上実績を引き継げるという期待と、契約・顧客が継続しない慎重ケースを両方作ります。

譲渡価格だけを必要資金に置いた後、在庫補充・修繕・給与・契約切替費用が重なった
- 範囲屋号、設備、在庫、顧客契約、従業員、債務のどこまで移るか曖昧
- 価格譲渡対価の内訳と算定根拠、関連費用、支払時期を分けていない
- 継続許認可、賃貸借、仕入先、主要顧客、キーパーソンの継続確認がない
この記事の結論
- 承継範囲を特定
資産・負債・契約・人員・知財を対象一覧と契約へ結びます。 - 必要資金を三分割
取得対価、移行費用、引継ぎ後の設備・運転資金を分けます。 - 慎重ケースを作成
顧客離脱、修繕増、移行遅延を月次資金繰りへ反映します。
譲渡対価と、事業を引き継いだ翌日から必要な現金を別表にする
日本政策金融公庫は「継ぐスタ」を、事業を譲り渡したい経営者から事業を受け継いで始める創業形態と説明しています。既存の店舗・設備等を引き継げる可能性がある一方、契約主体や譲渡方式、対価支払、引継後の資金を具体化する必要があります。
| 区分 | 確認項目 | 証拠・同意 |
|---|---|---|
| 資産 | 在庫・設備・車両・敷金・知財 | 台帳・評価・名義 |
| 負債 | 買掛・借入・未払・保証 | 残高・引受有無 |
| 契約 | 賃貸・顧客・仕入・保守 | 相手方同意・再契約 |
| 人員 | 雇用・給与・有休・技能 | 方式別の労務確認 |
| 許認可 | 営業・施設・名義・届出 | 所管窓口確認 |
| データ | 顧客・会計・予約・個人情報 | 移管範囲・権限 |
「事業一式」とまとめず、対象・対象外・条件付き・第三者同意待ちに分けます。
譲渡対価1,500万円でも、専門家・設備更新・運転資金を含む総額は2,550万円
以下は費用区分を示す架空例で、企業価値や融資上限ではありません。
| 資金使途 | 架空金額 | 確認資料 |
|---|---|---|
| 事業譲渡対価 | 1,500万円 | 価格根拠・契約案 |
| 専門家・調査・契約費 | 150万円 | 見積・支援範囲 |
| 設備更新・名義切替 | 300万円 | 設備・手続見積 |
| 引継後運転資金 | 600万円 | 月次資金繰り |
| 合計 | 2,550万円 | 1,500+150+300+600 |
対価の支払日と融資実行日、契約解除条件、クロージング前提条件を専門家と確認します。
売り手利益600万円から一時利益と後継人件費を調整すると、正常化利益は150万円
利益、費用、調整項目は架空例です。
| 調整項目 | 金額 | 計算への向き |
|---|---|---|
| 売り手の営業利益 | 600万円 | 出発点 |
| 一時的な設備売却益 | 150万円 | 控除 |
| 旧経営者を代替する人件費 | 360万円 | 控除 |
| 事業外費用の除外 | 60万円 | 加算 |
| 正常化利益 | 150万円 | 600-150-360+60 |
| 年間元金返済の架空例 | 216万円 | 別途現金で確認 |
| 返済後差額 | -66万円 | 150-216 |
税、減価償却、更新投資、家計は別途確認します。売り手利益が黒字でも、後継者体制で返済できるとは限りません。
売掛・在庫・買掛差額550万円に、固定支出3か月450万円を加えると1,000万円
残高、固定支出、回収・支払条件は架空例です。
| 項目 | 架空残高 | 資金への向き |
|---|---|---|
| 引継対象の売掛金 | 500万円 | 回収条件を確認 |
| 引継対象の在庫 | 300万円 | 換価・滞留を確認 |
| 引継対象の買掛金 | 250万円 | 支払主体を確認 |
| 運転資金差額 | 550万円 | 500+300-250 |
| 固定支出3か月 | 450万円 | 150×3 |
| 必要運転資金 | 1,000万円 | 550+450 |
売掛・在庫・買掛を誰が引き継ぐかで必要額は変わります。譲渡対価と重複計上しないよう対象一覧へ結び付けます。
事業承継での創業融資に想定される3つの相談
以下は成約・融資実績ではなく、確認対象を示す想定例です。
譲渡対価1,500万円と総必要資金2,550万円を分けたい
売り手利益600万円を引継後150万円へ正常化したい
売掛・在庫・買掛から運転資金1,000万円を確認したい
継ぐスタ型融資計画の5工程
承継方式、対象調査、価格条件、移行、取得後資金の順です。
- 01承継目的を定義顧客価値・地域・技術・雇用
- 02対象を調査資産・負債・契約・人員
- 03価格と条件を合意算定・支払・解除・調整
- 04移行計画を作成同意・名義・許認可・告知
- 05資金繰りを検査取得・追加投資・慎重ケース
取得の実行性は承継可能性・価格透明性・取得後返済力で判断する
過去の売上額だけでは足りません。
移行できる根拠
対価の説明
慎重ケース残高
確認の組合せ取得後の返済余力=承継後粗利-固定費-移行追加費用-税金-返済
この図は事業承継創業を、契約主体、譲渡方式、承継対象、対価、正常化利益、引継後運転資金へ分ける判断軸です。専門家と金融機関の個別確認を優先してください。
この事業で融資前に数値化するポイント
譲渡価格と必要資金を同じ数字にしない
対価に含まれる資産、営業権、在庫精算、保証金を確認し、追加設備と運転資金を別に積み上げます。融資対象になるかは申込先へ事前確認します。
承継前の実績を承継後の計画へ橋渡しする
商品、価格、顧客、担当者、店舗、仕入条件の変更点を列挙します。変わらない根拠がある項目と、再契約・再取得が必要な項目を分けます。
撤退条件も取得前に確認する
許認可不取得、貸主不同意、重大な簿外債務、主要契約終了等が判明した場合の解除、代金返還、費用負担を専門家と確認します。
ゼロからの創業と既存事業取得の違いを整理する
譲渡対象を列挙
資産、在庫、知財、契約、人員、債務を確認します。
価格と支払を分解
算定根拠、手付、残代金、調整条項を確認します。
継続条件を検証
同意、名義変更、許認可、引継ぎ期間を確認します。
承継計画表には、譲渡人・譲受人、承継方式、対象事業、基準日、対象資産・在庫・債権・債務・知財・契約・従業員、除外項目、譲渡価格と算定根拠、手付・残代金・価格調整、表明保証、解除条件、許認可、貸主・取引先等の同意、引継ぎ期間、競業避止、取得後投資、運転資金、申込額、自己資金、支払日を記載します。
融資制度、審査、契約、許認可、知的財産、工事区分、原状回復、個人情報、連絡先変更の扱いは、申込時点の公式案内、契約文言、物件、権利、利用サービス、個別事情で異なります。公式情報と原契約を確認し、必要に応じて申込先、貸主、施工会社、弁護士、弁理士、税理士等へ相談してください。
株式・事業・資産のどれを取得するか確認する
譲渡対価・調査・契約・名義変更
- 譲渡代金と手付・残代金の支払日
- 仲介、調査、専門家、登記等の費用
- 在庫・保証金・前払費用の精算
- 取得対象外の設備を新規購入する費用
修繕・仕入・給与・広告・返済
- 承継直後の仕入・給与・家賃・外注費
- 老朽設備の修繕・更新と休業損失
- 顧客告知、看板、販促、システム切替
- 売上減少・入金遅延時の最低口座残高
譲渡価格1,000万円、追加設備200万円、移行費用80万円、運転資金420万円なら、必要額を1,700万円と一括表示せず、支払先・支払日・証憑・資金区分へ分けます。数字は例示です。譲渡日前に払う費用と融資実行後に払う費用が逆転しないか確認します。

売上実績ではなく、引き継げる根拠と失う可能性を並べる
過去三期の売上があっても、主要顧客の契約が譲受人へ移らなければ同じ売上は続きません。上位顧客、契約期間、変更同意、担当者、解約可能性を確認し、継続率100%の基準ケースと離脱を見込む慎重ケースを作ります。
譲渡価格と算定根拠、支払条件を対応させる
| 項目 | 計算・確認方法 | 根拠資料 |
|---|---|---|
| 設備・在庫 | 対象一覧、状態、数量、所有者 | 現物、台帳、評価、修繕を確認 |
| 顧客・仕入 | 契約、注文、取引履歴 | 移転同意と継続意向を確認 |
| 従業員 | 雇用、待遇、引継ぎ意向 | 法的手続きと採用予備費を確認 |
| 許認可・物件 | 名義、承継可否、期限 | 行政・貸主へ個別確認 |
営業権という一語へまとめず、何が売上を生むかを項目別に確認します。承継できない許認可、新規契約が必要な賃貸借、本人同意を要する情報等があります。調査結果と最終契約が異なる場合は、資金計画と申込資料も更新します。
顧客・従業員・許認可・賃貸借の継続を検証する
顧客価値・地域・技術・雇用
資産・負債・契約・人員
算定・支払・解除・調整
同意・名義・許認可・告知
取得・追加投資・慎重ケース
資金繰り表では、譲渡代金、在庫精算、保証金、設備代、専門家費用を支払日別に置きます。売上は譲渡日から自動で同額計上せず、契約更新、顧客告知、請求名義、入金サイトを反映します。
慎重ケースでは、上位顧客の一部離脱、設備故障、採用費、名義変更の遅れを同時に置きます。譲渡人による一定期間の引継ぎ支援がある場合は、期間、業務、報酬、終了後の代替体制を契約と計画へ揃えます。
制度、許認可、手続、融資条件は変更される場合があります。申込時は公的機関の最新情報と金融機関の案内を確認してください。
取得後十二か月の投資・運転資金・返済を月別化する
調査資料には従業員・顧客・取引先の機密情報が含まれます。秘密保持、閲覧権限、匿名化、保管期限を決め、申込先へ必要範囲と提出方法を確認します。承継対象外の個人情報を無制限に複製しません。
本記事は既存事業を取得して創業する際の一般的な計画整理です。事業価値、契約効果、債務承継、許認可、雇用、税務、融資可否を判断しません。承継方式と個別契約に応じて申込先と専門家へ確認してください。
創業融資サポートを利用したお客様の声
支援の進み方や相談時の状況を知るには、実際のお客様インタビューが参考になります。承認率などの集計数字ではなく、ご本人の体験を確認できる事例をご案内します。






融資のアイラボの料金と支援範囲
着手金0円・成功報酬5%+税
報酬は融資が実行され、着金したときに発生します。融資が実行されなかった場合、サポート報酬はかかりません。
契約前に、成功報酬の計算対象、消費税、支援期間、追加費用の有無、解約条件を確認します。支援を利用しても融資は保証されず、最終的な可否と条件は金融機関等が決定します。
よくある質問
申込み方法や必要書類は制度・窓口・事業内容によって異なります。個別条件は必ず担当窓口へご確認ください。
事業を引き継ぐ資金も融資相談できますか?
日本公庫の事業承継マッチング支援Q&Aは、事業の譲受に必要な資金の融資申込が可能と案内しています。個別条件は窓口へ確認します。
譲渡対価だけを必要資金にすればよいですか?
専門家費用、設備更新、契約切替、在庫・売掛の資金、引継後の給与・家賃なども分けて計算します。
事業譲渡と株式譲渡は同じですか?
契約主体、引き継ぐ資産・負債・契約等が異なります。案件に合う方式を専門家へ確認します。
売り手の決算書の利益をそのまま使えますか?
一時損益、旧経営者の無償・低額労働、私的費用、設備更新等を確認し、引継後の体制へ正常化します。
許認可や契約は自動で引き継げますか?
自動承継とは限りません。譲渡方式ごとに所管窓口、取引先、貸主、専門家へ確認します。
引継期間は何を確認しますか?
顧客・仕入先、従業員、設備、システム、請求・入金、許認可、鍵・データ等を期限と担当者付きで管理します。
融資相談には何を用意しますか?
基本合意・契約案、対象一覧、決算・試算表、正常化計算、対価根拠、専門家・設備見積、月次資金繰りを準備します。
この記事の監修者・運営者情報

石川 康平
五常コンサルティング株式会社 代表取締役
2024年の問い合わせ・ヒアリング対応300件をもとに、創業融資の支援範囲・料金・制度情報について確認しています。
- 執筆・編集
- 融資のアイラボ編集部
- 監修
- 五常コンサルティング株式会社 代表取締役 石川 康平
- 公開日
- 2026年8月27日
- 最終更新日
- 2026年8月27日
- 制度情報の確認方法
- 日本政策金融公庫、信用保証協会などの公式ページを確認し、申込時は各窓口で最新情報を再確認します。
※記事内の相談場面を表現した写真は、内容を分かりやすく伝えるために作成したAI生成のイメージです。「お客様の声」に掲載しているお客様と監修者の写真は、実際のお客様・監修者の写真です。
確認した公式情報
制度内容や申込方法は改定される場合があります。申込時には各公式ページと窓口で最新情報をご確認ください。PDFは容量が大きい場合があるため、スマートフォンでは通信環境にもご注意ください。
- 日本政策金融公庫「What’s 継ぐスタ」
- 日本政策金融公庫「継ぐスタ計画書の書き方講座」
- 日本政策金融公庫「事業承継支援」
- 日本政策金融公庫「事業承継・集約・活性化支援資金」
- 日本政策金融公庫「事業承継マッチング支援 Q&A」
制度情報確認日:2026年8月27日
事業承継型の創業融資計画の確認表を整える
承継方式、対象資産・契約・人員、譲渡価格、移行条件、取得後十二か月の資金繰りを一枚へまとめます。未確定部分は推測で埋めず、確認先と期限を付けて管理します。
資料が完成していなくても、相談した時点で契約する必要もありません。
※融資の可否、金額、利率、返済期間、担保・保証人などの条件は、各金融機関・信用保証協会の審査により決定されます。融資のアイラボは金融機関ではなく、融資の実行を保証するものではありません。
※本記事は2026年8月27日時点の公表情報をもとに作成しています。制度内容は変更される場合がありますので、申込時には必ず各公式窓口で最新情報をご確認ください。
