事業承継の創業資金譲渡価格のほかに何が必要?

譲渡代金を払っても、設備更新や給与の支払は続きます。引き継ぐ対象と条件を確かめ、取得時の費用と、その後に使う現金を分けて計画しましょう。

工具店で商品と在庫の引継ぎを確認する現経営者と後継者。AI生成の架空イメージ。

仕事の場面はAI生成の架空イメージです

譲渡価格と必要資金を分ける

取得代金と、その後の備え

事業の譲渡代金1,500万円

調査・専門家・契約150万円

設備更新・名義切替300万円

引継後の現金600万円

準備する総額2,550万円

架空例A。運転資金600万円は将来の支払用の現金です。譲渡代金に含まれる在庫等を追加費用へ重ねず、支払先と日付を確認します。

取得費・更新費・現金の内訳へ →
取得費・更新費・現金の内訳

以下は費用区分を示す架空例で、企業価値や融資上限ではありません。

資金使途架空金額確認資料
事業譲渡対価1,500万円価格根拠・契約案
専門家・調査・契約費150万円見積・支援範囲
設備更新・名義切替300万円設備・手続見積
引継後運転資金600万円月次資金繰り
合計2,550万円1,500+150+300+600

対価の支払日と融資実行日、契約解除条件、クロージング前提条件を専門家と確認します。

この総額は例Aです。後述の例Cは運転資金1,000万円という別条件の試算で、例Aの600万円に追加して足す数字ではありません。

売り手の利益を、後継者の体制へ直す

引継後も続く利益を考える
売り手提示の年間利益600万円
含まれる一時的な売却益−150万円
旧経営者に代わる人件費−360万円
含まれる事業外費用を除く+60万円
調整後の年間利益150万円

独立した架空例B。600万円は設備売却益を含む提示利益で、営業利益ではありません。元金返済216万円との単純差は−66万円ですが、現金不足額ではありません。税・減価償却・資金滞留・設備更新・家計を別に調整します。

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年間利益の調整明細

利益、費用、調整項目は架空例です。

調整項目金額計算への向き
売り手提示の年間利益600万円設備売却益150万円を含む提示額
一時的な設備売却益150万円控除
旧経営者を代替する人件費360万円控除
事業外費用の除外60万円加算
正常化利益150万円600-150-360+60
年間元金返済の架空例216万円別途現金で確認
利益と元金返済の単純差-66万円150-216

税、減価償却、更新投資、家計は別途確認します。売り手利益が黒字でも、後継者体制で返済できるとは限りません。

この独立した例Bの600万円は、一時的な設備売却益を含めた売り手提示の年間利益です。設備売却益は通常の営業利益へ含めて計算する項目ではありません。税区分をそろえた調整後の年間利益150万円と元金返済216万円を比較した−66万円は、銀行残高や現金不足額ではありません。返済に回る現金は減価償却等の非現金項目、売掛・在庫・買掛の増減、納税、更新投資、家計を別に調整して求めます。

売掛金・在庫と、手元に残す現金を分ける

滞留する資金と現金の備え
  1. 売掛金+在庫−買掛金500+300−250=550万円
  2. 固定支出3か月分を加える150万円×3=450万円
この条件での管理上の目安1,000万円

独立した架空例C。例Aの運転資金600万円とは別条件です。550万円は口座現金ではありません。既に譲渡対価に含まれる分を二重加算せず、引継範囲と回収・支払日で追加現金を求めます。

別条件の運転資金の計算表へ →
別条件の運転資金の計算表

残高、固定支出、回収・支払条件は架空例です。

項目架空残高資金への向き
引継対象の売掛金500万円回収条件を確認
引継対象の在庫300万円換価・滞留を確認
引継対象の買掛金250万円支払主体を確認
運転資金差額550万円500+300-250
固定支出3か月450万円150×3
必要運転資金1,000万円550+450

売掛・在庫・買掛を誰が引き継ぐかで必要額は変わります。譲渡対価と重複計上しないよう対象一覧へ結び付けます。

この表は独立した例Cで、総必要資金2,550万円の例Aとは条件が異なります。550万円は売掛金・在庫に滞留する資金の管理上の目安で、銀行現金ではありません。固定支出3か月分450万円を別の安全余裕として加える整理ですが、必要現金が必ず1,000万円になるという判断ではありません。譲渡対価に含まれる対象を控除し、承継後の回収・支払日を並べ、同じ資金を二重に用意しないよう確かめます。

「事業一式」を、対象と条件へ分ける

承継の対象と条件を分ける

資産・負債・契約・人員・許認可・データ

引継ぎ対象

対象物と移る日を契約へ記載

引継ぎ対象外

新規調達・代替費用を計画

条件付き・確認待ち

相手方同意や所管確認を追跡

事業譲渡・株式譲渡などの方式で条件が異なります。資産を買えば契約や許認可も移ると考えず、対象一覧を専門家と照合します。

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資産・負債・契約等の一覧

日本政策金融公庫は「継ぐスタ」を、事業を譲り渡したい経営者から事業を受け継いで始める創業形態と説明しています。既存の店舗・設備等を引き継げる可能性がある一方、契約主体や譲渡方式、対価支払、引継後の資金を具体化する必要があります。

区分確認項目証拠・同意
資産在庫・設備・車両・敷金・知財台帳・評価・名義
負債買掛・借入・未払・保証残高・引受有無
契約賃貸・顧客・仕入・保守相手方同意・再契約
人員雇用・給与・有休・技能方式別の労務確認
許認可営業・施設・名義・届出所管窓口確認
データ顧客・会計・予約・個人情報移管範囲・権限

「事業一式」とまとめず、対象・対象外・条件付き・第三者同意待ちに分けます。

同じ売上が続く根拠を、相手ごとに確認

承継できるかを確かめる相手

譲渡価格の根拠と継続条件をつなぐ

顧客・仕入先

契約・同意・注文の継続意向

従業員

雇用条件・引継ぎ・必要手続

貸主・行政等

賃貸借・許認可・期限

主要契約の終了や設備故障も慎重ケースへ反映します。未確認の契約を継続確定として売上へ入れず、引継後12か月の資金繰りで確認します。

価格と承継条件の確認表へ →
価格と承継条件の確認表
項目計算・確認方法根拠資料
設備・在庫対象一覧、状態、数量、所有者現物、台帳、評価、修繕を確認
顧客・仕入契約、注文、取引履歴移転同意と継続意向を確認
従業員雇用、待遇、引継ぎ意向法的手続きと採用予備費を確認
許認可・物件名義、承継可否、期限行政・貸主へ個別確認

営業権という一語へまとめず、何が売上を生むかを項目別に確認します。承継できない許認可、新規契約が必要な賃貸借、本人同意を要する情報等があります。調査結果と最終契約が異なる場合は、資金計画と申込資料も更新します。

一宮市・本町商店街の実景

愛知県・一宮市・本町商店街

引き継ぐ商いを、現場で確かめる

一宮市本町商店街の実景です。事業承継では、店頭の見え方に加え、固定客との関係、商店街活動、営業時間、物件契約を確認します。写真の店舗を譲渡案件や当社の支援先として紹介しているものではありません。

一宮市・本町商店街/2023年7月撮影。現在の様子とは異なる場合があります。写真:Asturio Cantabrio(Wikimedia Commons原典)/CC BY-SA 4.0。縮小・WebP変換。同ライセンスで利用。

必要な準備を項目別に確認

事業承継の創業資金の確認事項

日本政策金融公庫は、既存事業を受け継いでスタートする形を「継ぐスタ」と案内しています。すでにある設備、販売先、仕入先、従業員、ノウハウ等を活用できる可能性がある一方、すべてが当然に後継者へ移るわけではありません。

株式譲渡、事業譲渡、個別資産の売買等では、取得するもの、負う債務、必要手続きが異なります。方式名だけで処理を決めず、基本合意、調査、最終契約、許認可や契約相手の同意を確認します。

融資計画では、譲渡代金だけで必要額を計算しません。仲介・調査・登記等の費用、老朽設備の更新、在庫補充、名義変更中の固定費、売上入金までの運転資金を月別に置きます。

親族内承継の記事や融資後の代表交代とは異なり、本記事は第三者を含む既存事業の取得と同時に創業する場面へ焦点を当てます。売上実績を引き継げるという期待と、契約・顧客が継続しない慎重ケースを両方作ります。

公式案内と今回の確認範囲
この記事で扱う範囲
事業承継での創業融資に想定される3つの相談
承継資金を具体化

以下は成約・融資実績ではなく、確認対象を示す想定例です。

想定相談例1

譲渡対価1,500万円と総必要資金2,550万円を分けたい

想定相談例2

売り手利益600万円を引継後150万円へ正常化したい

想定相談例3

売掛・在庫・買掛から運転資金1,000万円を確認したい

譲渡価格と必要資金を同じ数字にしない

対価に含まれる資産、営業権、在庫精算、保証金を確認し、追加設備と運転資金を別に積み上げます。融資対象になるかは申込先へ事前確認します。

承継前の実績を承継後の計画へ橋渡しする

商品、価格、顧客、担当者、店舗、仕入条件の変更点を列挙します。変わらない根拠がある項目と、再契約・再取得が必要な項目を分けます。

撤退条件も取得前に確認する

許認可不取得、貸主不同意、重大な簿外債務、主要契約終了等が判明した場合の解除、代金返還、費用負担を専門家と確認します。

ゼロからの創業と既存事業取得の違いを整理する
対象

譲渡対象を列挙

資産、在庫、知財、契約、人員、債務を確認します。

対価

価格と支払を分解

算定根拠、手付、残代金、調整条項を確認します。

移行

継続条件を検証

同意、名義変更、許認可、引継ぎ期間を確認します。

承継計画表には、譲渡人・譲受人、承継方式、対象事業、基準日、対象資産・在庫・債権・債務・知財・契約・従業員、除外項目、譲渡価格と算定根拠、手付・残代金・価格調整、表明保証、解除条件、許認可、貸主・取引先等の同意、引継ぎ期間、競業避止、取得後投資、運転資金、申込額、自己資金、支払日を記載します。

融資制度、審査、契約、許認可、知的財産、工事区分、原状回復、個人情報、連絡先変更の扱いは、申込時点の公式案内、契約文言、物件、権利、利用サービス、個別事情で異なります。公式情報と原契約を確認し、必要に応じて申込先、貸主、施工会社、弁護士、弁理士、税理士等へ相談してください。

株式・事業・資産のどれを取得するか確認する
取得時に必要な資金

譲渡対価・調査・契約・名義変更

  • 譲渡代金と手付・残代金の支払日
  • 仲介、調査、専門家、登記等の費用
  • 在庫・保証金・前払費用の精算
  • 取得対象外の設備を新規購入する費用
引継ぎ後に必要な資金

修繕・仕入・給与・広告・返済

  • 承継直後の仕入・給与・家賃・外注費
  • 老朽設備の修繕・更新と休業損失
  • 顧客告知、看板、販促、システム切替
  • 売上減少・入金遅延時の最低口座残高

別の架空例Dとして、譲渡価格1,000万円、追加設備200万円、移行費用80万円、運転資金420万円なら、必要額を1,700万円と一括表示せず、支払先・支払日・証憑・資金区分へ分けます。数字は例示です。譲渡日前に払う費用と融資実行後に払う費用が逆転しないか確認します。

売上実績ではなく、引き継げる根拠と失う可能性を並べる
基本合意の前後に

過去三期の売上があっても、主要顧客の契約が譲受人へ移らなければ同じ売上は続きません。上位顧客、契約期間、変更同意、担当者、解約可能性を確認し、継続率100%の基準ケースと離脱を見込む慎重ケースを作ります。

顧客・従業員・許認可・賃貸借の継続を検証する

資金繰り表では、譲渡代金、在庫精算、保証金、設備代、専門家費用を支払日別に置きます。売上は譲渡日から自動で同額計上せず、契約更新、顧客告知、請求名義、入金サイトを反映します。

慎重ケースでは、上位顧客の一部離脱、設備故障、採用費、名義変更の遅れを同時に置きます。譲渡人による一定期間の引継ぎ支援がある場合は、期間、業務、報酬、終了後の代替体制を契約と計画へ揃えます。

制度、許認可、手続、融資条件は変更される場合があります。申込時は公的機関の最新情報と金融機関の案内を確認してください。

取得後十二か月の投資・運転資金・返済を月別化する
事業事業概要・沿革・拠点・組織・承継理由
契約基本合意・最終契約・同意・賃貸借
財務決算・試算表・資金繰り・税務資料
対象資産・在庫・債権債務・知財・契約一覧
価格評価・算定根拠・支払条件・調整条項
移行顧客・従業員・許認可・システム・告知計画

調査資料には従業員・顧客・取引先の機密情報が含まれます。秘密保持、閲覧権限、匿名化、保管期限を決め、申込先へ必要範囲と提出方法を確認します。承継対象外の個人情報を無制限に複製しません。

本記事は既存事業を取得して創業する際の一般的な計画整理です。事業価値、契約効果、債務承継、許認可、雇用、税務、融資可否を判断しません。承継方式と個別契約に応じて申込先と専門家へ確認してください。

この内容を具体化する補足記事
本文の根拠となる公式情報

創業融資サポートを利用したお客様の声

支援の進み方や相談時の状況を知るには、実際のお客様インタビューが参考になります。承認率などの集計数字ではなく、ご本人の体験を確認できる事例をご案内します。

融資のアイラボの料金と支援範囲

着手金0円・成功報酬5%+税

報酬は融資が実行され、着金したときに発生します。融資が実行されなかった場合、サポート報酬はかかりません。

候補制度の整理必要資金の確認創業計画書の作成支援提出資料の確認面談質問の準備申込前後の進行整理

契約前に、成功報酬の計算対象、消費税、支援期間、追加費用の有無、解約条件を確認します。支援を利用しても融資は保証されず、最終的な可否と条件は金融機関等が決定します。

よくある質問

申込み方法や必要書類は制度・窓口・事業内容によって異なります。個別条件は必ず担当窓口へご確認ください。

事業を引き継ぐ資金も融資相談できますか?

日本公庫の事業承継マッチング支援Q&Aは、事業の譲受に必要な資金の融資申込が可能と案内しています。個別条件は窓口へ確認します。

譲渡対価だけを必要資金にすればよいですか?

専門家費用、設備更新、契約切替、在庫・売掛の資金、引継後の給与・家賃なども分けて計算します。

事業譲渡と株式譲渡は同じですか?

契約主体、引き継ぐ資産・負債・契約等が異なります。案件に合う方式を専門家へ確認します。

売り手の決算書の利益をそのまま使えますか?

一時損益、旧経営者の無償・低額労働、私的費用、設備更新等を確認し、引継後の体制へ正常化します。

許認可や契約は自動で引き継げますか?

自動承継とは限りません。譲渡方式ごとに所管窓口、取引先、貸主、専門家へ確認します。

引継期間は何を確認しますか?

顧客・仕入先、従業員、設備、システム、請求・入金、許認可、鍵・データ等を期限と担当者付きで管理します。

融資相談には何を用意しますか?

基本合意・契約案、対象一覧、決算・試算表、正常化計算、対価根拠、専門家・設備見積、月次資金繰りを準備します。

この記事の監修者・運営者情報

監修者 五常コンサルティング株式会社 代表取締役 石川康平
監修者

石川 康平

五常コンサルティング株式会社 代表取締役

2024年の問い合わせ・ヒアリング対応300件をもとに、創業融資の支援範囲・料金・制度情報について確認しています。

五常コンサルティング株式会社の公式サイトを見る

執筆・編集
融資のアイラボ編集部
監修
五常コンサルティング株式会社 代表取締役 石川 康平
公開日
2026年8月27日
最終更新日
2026年9月13日
制度情報の確認方法
日本政策金融公庫、信用保証協会などの公式ページを確認し、申込時は各窓口で最新情報を再確認します。

※冒頭の仕事の写真はAI生成の架空イメージです。出典を記した地域写真は実景です。お客様の声・監修者の写真は実際の人物です。

確認した公式情報

2026年9月13日の再確認:日本政策金融公庫の継ぐスタ計画書の案内を再確認しました。価格・利益・残高は架空例で、企業価値評価や融資承認額ではありません。所在地・営業内容に合う条件は各窓口へ確認してください。

制度内容や申込方法は改定される場合があります。申込時には各公式ページと窓口で最新情報をご確認ください。PDFは容量が大きい場合があるため、スマートフォンでは通信環境にもご注意ください。

制度情報確認日:2026年8月27日

事業承継型の創業融資計画の確認表を整える

承継方式、対象資産・契約・人員、譲渡価格、移行条件、取得後十二か月の資金繰りを一枚へまとめます。未確定部分は推測で埋めず、確認先と期限を付けて管理します。

資料が完成していなくても、相談した時点で契約する必要もありません。

※融資の可否、金額、利率、返済期間、担保・保証人などの条件は、各金融機関・信用保証協会の審査により決定されます。融資のアイラボは金融機関ではなく、融資の実行を保証するものではありません。

※本記事は2026年8月27日時点の公表情報をもとに作成しています。制度内容は変更される場合がありますので、申込時には必ず各公式窓口で最新情報をご確認ください。

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